ある日とつぜん、着物に目覚めたものの──、さてどうすれば? 迷いながら訊ねながら学びながらの着物日々記録。
*** 着迷いごと ***
二度目の京都きもの旅  一日目(その2 ・ 正尚堂さんへ)
2008年 06月 13日 (金) 18:44 | 編集
茶山に電車で行こうと思うと、いくつもの乗り換えがあるうえ、そこそこ電車賃が
かかります。前回もそうでしたが、京都旅行は二人以上であれば、タクシーを
利用するのが一番早くて、けっきょくは安上がりだと感じていたので、今回も
「きもの割引」のあるMKタクシーを利用することに。

「京うちわ 阿以波(あいば)」さんのある中京区柳馬場(やなぎのばんば)六角下ル
の住所を電話で告げると、5分ほどで近くのMKタクシーが来てくれました。
茶山まではおよそ20分弱、きもの割引のおかげで、ひとり600円弱で到着です。
さて、なぜ茶山を訪れたのか? 
それは、「正尚堂(せいしょうどう)」さんに寄るためでした。
スタジオクゥさんのブログ「キモノは別腹」に掲載された記事、さらには地元雑誌
「京都地元案内帖 2008」(リーフ・パブリケーションズ刊)の記事を読んで、これはもう、
今回、必ず立ち寄らねば! と熱く心に決めていたのです。

「こんにちはー、お邪魔しまーす」と声をかけつつ、正尚堂さんの暖簾をくぐります。
下駄を脱いでお店に上がれば、すぐさま、なにやら友だちの家にお邪魔したような
ゆるりとした空気に包まれました。
ほどよく雑然として(すべて売物なのだから恐れ入ります)、のんびりと品物を選べる
雰囲気──、さらにはお茶やアルコオル類までいただけてしまうのです。ちょうど
小腹が空いてきたので、さっそくYちゃんは煎茶のセット(お菓子付)、わたしは
珈琲と手作りチョコレートケーキを頼みました。
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↑セットのお菓子が美味しそうだった……。  ↑驚きのボリューム。味も申し分なし。

食べ物を前にすると、ただただ満面の笑みが浮かんできます。
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いきなりまったりと寛ぎつつ、正尚堂のご主人・佐野さんに「キモノは別腹」や雑誌を見て
伺ったことを伝えます。気さくでほがらかな佐野さん、すぐに話が弾みはじめました。
さらに、さらに。Yちゃんとわたしが着ている着物を見て、ひと目でだいたいの趣味を
把握したらしい佐野さん(さすが)が、わたしに向かってさりげなくおっしゃったものです。
「夏大島、入ってますよ」
おお、そうですか。でも、知る限り、夏大島は高級贅沢品。手に入るようなものぢゃ
ありません。ですが、せっかくですもの、どのようなものか拝見させていただいて、と。
をを、透け具合が涼しそう。
「あのう、羽織らせていただいても……?」
「もちろん!」
にこやかに頷く佐野さんに安心して、そっと羽織らせていただきました。かるい。涼しい。
サイズもぴったり。
「いいですねえ」
「でしょ? 掘り出しもんだよー」
「わはははは」
だからといって、手が出るようなものじゃないですよー。思いながら値札を確認して、
手がとまりました。思考も止まりました。
ええっと、ええっと。ゼロが4つ。でもって、頭の数字ときたら、アヒルさん、に
見えますが……?!
「あのう。これ、まちがってるんじゃ……?(ゼロ1個足りないんぢゃ?? 
もしくは、数字の書きまつがいぢゃ???)」
「入ってきたばっかりでね、それは思い切ったサービス品なの」
「お、思い切りすぎじゃありませんか」
「そういうモノもないとねえ」
……いや。ていうかそれ、儲けを度外視なさっておられ過ぎるのではないでせうか。
手にした着物からは、大島紬特有の泥のにおいが、かすかに立ちのぼってきます。
なつおおしま。考えたこともなかった選択肢が、涼やかな顔でわたしの目前に
立っているのでした。
「これを手に入れなかったら、紬好きなんて言えませんよね」
思わず口を滑り出る言葉。すでに思考は停止ちう。
ほんとはですね、マイブームである「家庭内おせんちゃんごっこ」の為に、数千円の
やわらかものを手に入れられたら、という目論見があったのですよ。
でもそれは、また次回。今は、このびっくりするよな値札が下がった夏大島さんに
こんにちは、なのです。

いっぽうYちゃんは、「もう団扇を買ったから」と、おっとりのんびり、周囲を
見回しています。けれど思いがけず、「その団扇に合わせる浴衣がなくて……」という話が
こぼれてきました。すかさず佐野さんが言葉を挟みます。
「浴衣ってばさ、いいのがあるのよ、有松の」
「有松絞り?」
「そう。最近のはもう、本藍も使えなくて化学染料で、生地も海外ものなんだけどね。
昔のは贅沢に木綿から作って、藍で染めてるの」
「見たいです!」
じゃあ、というので、くったりと着こまれた、さまざまな藍色の浴衣が現れました。
うち一枚を見て、思わず叫んだワタクシ。
「れんこんっ!!!」
「……は?」
怪訝な顔でこちらを見つめる佐野さん、そしてYちゃん。
「──いえ、あの、れんこん好きなもんですから、その柄がどう見てもレンコンに
見えたので」
顔赤らめて言い訳します。そのレンコンさん(違)をはじめ、大きな柄いきのもの、
よろけ縞のように絞られたもの、あるいは大小の絞りが全面に散ったもの、
それぞれが「有松だがね」と挨拶してくれるのでした。よろしくですー。(え?)

Yちゃんが次々と羽織ってみるそばで、ほほほ、あてくしも羽織らせていただきました
ことよ。そりゃあもちろん、レンコンさんを。
そのうち一枚、可憐なYちゃんをはっとするほど引き立たせる浴衣がありました。
その有松は、わたしが羽織らせてもらっても、やはり、顔映りがよく、
ほどよくおとなっぽく、品を湛えた浴衣でした。
「どうしよう……」Yちゃんが呟きます。「うちわ、買っちゃったし」
なにを迷うことがありましょう。
「買いたまえ!」力強く、プッシュしました。
「キミが買わないなら、わたしが買う」(をい)
なにしろ、新品の有松絞りの浴衣は、仕立代込みで50000円以上の値がつくのが
一般的です。それがまた、「おおっ」な値札を下げて目の前で微笑んでいるのです。
ここで逃したら、二度と出会えませんて! おとと、失礼、唾、飛びました。
「ホントに似合ってますか……?」
おずおずと尋ねるYちゃんの言葉に、深々と頷く佐野さんとわたし。
いや実際、わたしがダンナだったら惚れ直すと思うー。佐野さんが携帯で撮って
くださった証拠写真がこちら↓。 隣でレンコンさんにうっとり、のアテクシ↓。
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他にも、目に入るものほぼすべてが売り物なのですから、正直、お店に
居続けようと思えば、ずうっといられるやも知れません。
簪も、珊瑚や翡翠の愛らしいものが、これまた「いいんですかい?」なお値段で
並んでいるし……。
でもでも、今日はまだこれから、夕餉までに行っておきたい場所がある。泣く泣く、
いったん失礼することにしました。なんなら、明日またお邪魔すればいいしー。(え)

ところでお会計の際に発覚したのですが、夏大島の値札、やっぱり「書きまつがい」が
あったのです! ですよねえ。とはいえ、書きまつがいされておらずとも、破格のお値段
であることに変わりはなく。だというのに、ですよ。書きまつがわれたままで、にっこりと
頂戴してしまったキチクのようなわたしを、平に平にお許しくださいっっ。
じ、次回はしっかりめっきり(?)、準備をして参りますゆえ〜〜!!!

そうそう、レンコン好きなわたしに、佐野さんが「れんこんやさんがあるよ」と
教えてくださったのでしたが、しまった、ちゃんとメモしておりませなんだ。今度
詳しく伺わなくては。木屋町の「れんこんや」さんで合ってますかね??

ああそれにしても。すでに初日の夕方にして、なにやらお腹いっぱい、着物を
味わっている心もちです。

                                      (つづく)
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