ある日とつぜん、着物に目覚めたものの──、さてどうすれば? 迷いながら訊ねながら学びながらの着物日々記録。
*** 着迷いごと ***
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ようやく月見月(八月)のはなし、その2
2009年 09月 06日 (日) 14:16 | 編集
さて、八月中旬はと申しますれば、それぞれ、あらかじめ数週間~数カ月前
より予定を入れていたものばかり。
夏かぜをひきずって万全とはいえない体ながら、咳は出ないのでご迷惑は
かかるまいと、着物をまとって出かけました。

【 59回目 】
Mさんと、日本民藝館へ足を運びました。前もって、購読新聞の読者サービスを
利用して、招待券を入手しておいたという手回しのよさ。
せっかくなので、ランチもご一緒に──、と話しておりましたら、Mさんから
耳寄りの情報が。民藝館のすぐそば、東京大学 駒場リサーチキャンパス内に
イタリアンレストランができたというのです。おお、本郷キャンパスの支店ですね。
さっそく、そちらで待ち合わせすることとなりました。
カポ・ペリカーノ駒場店は、高く抜けた天井が魅力的な空間でした。
なにかと心配りをくださるサービスににこにこしつつ、「本日のピザ」を
注文します。出てきたときは「ひとりじゃムリかも」と思ったはずが、
気づけば話を弾ませつつ、きれいに平らげておりました。

カポ・ペリカーノから出ると、ふたりして吸い寄せられるように、
中庭の建物に足が向きました。木材を積み上げた四角い小屋、
と見えた建物は、入口前に張られた表記によれば、「くうかん実験棟」。
「下足厳禁」の札に、草履を脱いで、そうっとお邪魔してみました。

この建物、和歌山県の協力を得て、紀州材をふんだんに使ったそうで、
間伐材の有効活用も視野に入れた「木造ブロック積層工法」なる方法で
建てられているとか。詳細は、こちらに記者発表記事がありました。
光もぞんぶんに入り、ガラスの一部が窓のように開くので、風も抜けていきます。
ちょうどMさんが連絡メールを打つ用もあったので、しばしこちらで休憩を……。
toudaikounai01toudaikounai01
心地よい風が吹き抜けていきます。空は青く、巨樹の葉は緑濃く──。
思わず深呼吸。
toudaikounai03
ひと息ついたところで、さ、すぐそこの民藝館へ参りましょうか。この日は水曜日。
わざわざ平日に、予定を擦りあわせて出かけたのには、わけがあります。
展覧会期間中は、毎月第2・第3の水曜日と土曜日に、西館も公開されるからでした。
nisikann02 
リサーチキャンパス内から写した西館外観。

この西館、民藝館の斜め前に建っています。「木造瓦葺平屋長屋門、木造瓦葺2階建」。
そもそもは日本民藝館の創設者、柳宗悦氏の住居でした。入ればすぐに、民藝館に
較べればいくらか手狭とはいえ、一家屋としてはじゅうぶんに広い土間が開けています。
草履を脱いで、まさに「お邪魔いたします」な心もちにて上がりました。

順路にしたがって、まずは階段を上ります。
階段脇には三畳ほどの小さな和室。係の方にお聞きすると、書生部屋とのこと。
時代を感じました。つづいて宗悦氏の書斎であった部屋は、おおかたの棚や
本は展示のため撤去されたとはいえ、いかに本に囲まれた部屋であったかを
彷彿とさせてくれます。
一階に下りてみれば、居心地のよい居間にどっしりとテーブルが置かれ、
そえられた展示写真に写る和やかな食事風景に、この空間で過ぎていった
幸福なときが垣間見えます。隣接する小上がりになった和室では、庭を
眺めながらいつまでも座っていたくなりました。

以前行った、「生活と芸術──アーツ&クラフツ展」で観た、三国荘の
再現展示を思い出しました。民藝の心や作品を生活に取り入れるという点で
通底しているからでもありましょう、が、この西館のほうがはるかに素朴で、
装飾性は極力、削ぎ落とされているように感じました。
とはいえ、たぶん、専門的な観点からは、また異なる目があるのでは。なぞと
書いているうちにいろいろ知りたくなって、とりあえず、ちょうど書店で見かけた
「東京人」(都市出版)を手にとってみたり。(笑)
tokyojinn10 
柳宗悦や濱田庄司、黒田辰秋各氏と並んで名前のあがる、陶芸家・
河合寛次郎氏の記念館も、ぜひに訪ねてみたいと思ったことです。

西館内部は撮影不可なので、堂々たる長屋門前にて記念撮影を。
nisikann01
続いて民藝館に移り、ゆったりと家具展を見て周ります。Mさんと
あれこれ感想を語り合いつつ、終始なごやかな心もち。

Mさん、京都で入手した宮古上布に麻帯で。(この組み合わせにまつわる
肝に銘じたできごと」、いまも真新しく思い出します)
minngeikann03
この日は、夕刻にMさんの学生時代からのご友人にして、バレエ仲間の
Kさんと合流。本目的は明治記念館の夏季限定ビアテラス「鶺鴒」でありましたが、
事前にMさんの発案もあって、ひさびさに「SHIZEN」ギャラリーへと足を運びました。
こちらも変わらず、心地よい空気に満ちた空間です。
選び抜かれた品々を楽しんだあと、「鶺鴒」へ。平日だからと油断しましたが、
すでに長蛇の列でした。(予約席は高額のチャージ料金がかかるため、早めに
行って並べばいいとタカをくくっていたのです)
庭での待ち時間は計り知れないとのことにて、席が増設された室内での乾杯と
なりました。まさに宴会場の設えにて、気のおけない披露パーティにでも
参加している錯覚に陥りそう。話も、心も弾むひとときでしたが、
体調万全であれば、もっともっと飲んだり食べたりできたであろうに、という
点が心残りでありました。

すっかり長くなってしまった59回目の話。まとった麻着物についてすこし、
触れておこうかと思います。ご興味ある方は↓からどうぞ。もういちど上の
おなじ記事も出てしまいますが、その続きに、表記されます。
以前、8.28記事内【46回目】欄にて「衝撃の出逢い」について触れました。
この日まとっておりましたのが、まさにその一枚でした。
と申しましても、名の知れた人の手によるものでも、技巧すぐれた
織物でもありませぬ。平織りの麻着物です。

朽葉色の身頃に咲いているのは、すっくりと茎を延ばした薊。花の間を
秋茜(あきあかね)が飛んでいます。
仄かに土の匂いがただよってきそうな素朴さがあって、陽だまりに
惹かれるような思いで吸い寄せられたのでした。
ほとんど間をおかずに「羽織らせていただけますか?」とお願いして、
袖をとおして鏡の前に立ちました。

「とても好き」と「似合う」とがイコールになることは、多くはありません。
これは、幸運な一枚でした。
心底、ほしい。けれど、夏物は持っているし、いま、どうしても必要な一枚、
ではない──。
鏡と睨めっこしつつ、心中ではめまぐるしく考えが飛び回ります。その最中に、
灯屋2の店主・渋谷さんの話を伺って、手放しがたくなりました。

「これねえ、見つけたときにはどろどろでカビだらけで、とても出せるような
モノじゃなかったの。でも、なんだか、どうしてももったいないような気がしてね、
まずは洗ってみようってことで水に漬けたら、古いし、たぶん草木染だしで、
汚れといっしょに色が溶けだしちゃって、手のつけようがなくなっちゃったのね。
もうムリだと思ったけど、ひょっとしたらって、京都の染物やさんにお願いして、
なんとかなりませんかって。そうしたら、ずいぶん頑張ってくださって、
こんな風になったのよ」

泥とカビにまみれた塊が、手当てを経て、もういちど着物としてよみがえり、
ここでわたしの掌に触れている。その、泥とカビにまみれるまでの時間さえも
物語として秘めているような気がして、どうにもたまらなくなったのです。

目を凝らせばいまも、カビの跡が点々と散って、朽葉色にかすかな濃淡を
残しています。それもまた嬉しいなぞと感じるあたり、すっかりめっきりな
惚れっぷりです。
初下ろしの日、嬉しいことに、ふたりの人に褒めてもらえました。
ひとりは、マンションの出入口ですれ違った、おしゃまな女の子。(笑)
「きれいねー」、の言葉に素直に礼を言って、出てきました。
もうひとりは、民藝館を出たところで行き会ったご婦人。(あとで、民藝館を
手伝っておられる方だと分かりました)
着物ともども、にっこりな思いです。
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