ある日とつぜん、着物に目覚めたものの──、さてどうすれば? 迷いながら訊ねながら学びながらの着物日々記録。
*** 着迷いごと ***
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説話集、見てきたような嘘をつき……?
2009年 10月 06日 (火) 14:49 | 編集
日本女子大学の前学長、後藤祥子先生による特別講演会を、母と連れ立って
聴きに行きました。タイトルは「王朝文学のなぞ解き」。
会場は、日本女子大学目白キャンパス内、成瀬記念講堂です。

巨大な鯨の胸骨のように高く、しっかりと組まれた木の骨組み、
ステンドグラスを通じて入ってくるやわらかな日の光、そして、
大きなドーナツの輪っかに、ちいさなドーナツ型の蛍光灯が
通っているような、不思議な形の照明、などに見とれるうちに、
開講時間が近づいてきました。みるみる席が埋まっていきます。
ざわめきが高い天井に響きはじめ、あらかじめ配られた資料に
目を通しながら、期待感が高まるのを心地よく感じていました。

やがて壇上に、後藤先生が立たれました。

昨秋、ご一緒に仕事をさせていただいて以来なので、およそ
一年ぶりになるでしょうか。
すこしお痩せになったのでは、と、案じられたのも僅かな間。

話の前ふりとして、学生時代、ミステリが大好きで、コートの両ポケットに
一冊ずつ、文庫本を入れて歩いておられたと語られるところから、すぐに
引き込まれました。
わたしも大好きなミステリ作家たちの名前があがり、おおいに親近感を
いだくと共に、さて、そうしたミステリ好きの研究者がひも解く「なぞ」とは
いったいなにか? わくわくが募ります。

まずはおなじみ、『源氏物語』から。

「野分」に出てくる、光源氏の息子・夕霧と、明石の君付の女房たち
とのなにげないやりとりに隠された、夕霧のほんとうの心情とは──?

示されたのは、夕霧が、長年の想い人であり、幼なじみでもある
雲居雁に、歌を送る場面です。

当時、和歌は、詠んだ紙を手紙のようにそのまま持たせることは少なく、
花や折枝などに結んで贈るものでした。
なにかしら、歌に関連性があったり、あるいはその、花や枝自体に意味を
もたせるものであったり。と、贈り手のセンスや機知、あるいは知識が
試されることでもありました。

夕霧が、野分(台風)に遭ったお見舞に、父・光源氏の邸、六条院を訪ねた日。
激しい風のため、妻戸が開け放しになっていて、いつもなら、奥を
のぞけないように立てこめられた屏風も畳まれ、御簾まで風で
吹き上げられて、ずっと中まで見通しがきくのでした。
そこで、夕霧は、初めて、照り映えるような紫上の姿を目にします。

さらに翌日、父が、娘であるはずの玉鬘と恋人同士のように戯れる様子を
目にした夕霧は、なかば呆然としながら、明石の姫君の住まうあたりで、
紙と筆を借りるのでした。
そして、自身の想い人である雲居雁に歌を書きます。その紙を、風に
吹き乱された刈萱(かるかや)に添えて贈る様子を、そんな野暮な、と、
女房たちにからかわれるのですが……。

文学者や作家の随筆などでも取り上げられたりする箇所なのですが、
じつは、「まめ人」(誠実でまじめ、でも、いまひとつ面白みのない男)の
代名詞的に扱われることの多い夕霧の、青年らしい激情が垣間見える
ヒントがある。それは、じつは──。

思わずヒザを打つ展開でした。
また、『蜻蛉日記』の作者と、親しい女性とのやりとりから推察される事実とは、
など、「ああ、そういう側面から光をあてて考えられるのか」と頷く話が続きます。

さらに、歌人として名高い、赤染衛門の実像について。
ここで、本日の記事タイトル『説話集、見てきたような嘘をつき。』
にひっかかるのですが。
古来、日本には『古今集』などの説話集がありますが、まことしやかに
書かれた話が、史実に照らし合わせると、あり得ないことが判明することも
多い、という例にも触れられます。
講演の内容は、間断なく、聴き手の好奇心や思考を触発しつづけるものでした。

最後に、清少納言の「なぞ」について触れられ、これからそれを解いて
いかれる旨、語られてから、壇上から降りられました。

紅くなるほど手を叩きました……。

解散後、母とともにご挨拶を申しあげると、壇上におられたときとはまた
ちがった、茶目っ気が光る瞳で、笑いながら対応してくださいます。
母が先生の「追っかけ」を自任する気持ちが、あらためて、よく分かりました。

それにしても。
尋常ではないお忙しさを知っているだけに、その日常を縫って、
研究者として、ご自身の道を究め続けておられる日々を想像して、
ため息が洩れました。
一流の人の、淡々と積み上げていかれるものの、重み。
その、才能が放つ力。
いまさらながら、そうしたことを感じた一日となりました。

講演後、母と大学近くのカフェで興奮をわかちあったのち、
まだ明るいうちに目白駅前で別れました。
ここまできたら、寄っておきたいところがあるのです。──着物好きな
方なら、にやり、でしょうか。
そうです、そこです。(笑) つづきは、明日にでも。

「成瀬記念講堂」内、あまりにも愛らしいお手洗いを、つい、撮って
しまいました。純白の壁や窓枠に映える、甘いピンク。
そして懐かしい真ちゅう製のドアノブに、使用中表示。
……講演内容との落差は笑い捨ててやってください。
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