ある日とつぜん、着物に目覚めたものの──、さてどうすれば? 迷いながら訊ねながら学びながらの着物日々記録。
*** 着迷いごと ***
スポンサーサイト
--年 --月 --日 (--) --:-- | 編集
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
「着物あれこれ」── 青木玉氏 講演会
2009年 10月 13日 (火) 13:48 | 編集
10月最初の「着物でお出かけ」は、青木玉さんの講演会でした。

青木玉さんといえば、母が“あの”幸田文、祖父が幸田露伴という、外から
みると恵まれた、しかし、内からみるとあまりに大変な環境で育った方。
彼女の書いた随筆を読み進むと、露伴や文独自の哲学や躾の様子に、
肩が凝り、息ぐるしくなることもしばしば……。
いっぽうで、着物に関連した随筆は、ずいぶんと気を楽にして読むことが
できるのでした。

今回は講演タイトルが「着物あれこれ」。
着物に関する、わりあい気楽なものになるのでは、と思って伺うことに。

講演会場は、東京女子大学内、真新しい校舎の一教室。
『最新』という言葉を建築物に置き換えたような校舎に、いちいち目を
瞠りながら、広い教室で席を選びます。
着物姿の方も目立ちはじめ、やがて、開講時間になる頃には、
ほぼ満席となっていました。

壇上に現れた玉氏は、すらりと高い背を深々と折られて、白い襟足が
こちらの目に染みるほどに丁寧に、頭を下げられます。

玉氏がまず触れたのは、母校である東京女子大学キャンパスに
ひさしぶりに足を踏み入れた感慨でした。
八十歳を迎えた氏が、このキャンパスに初めて立ったのは、半世紀以上
前のこと。
「正面キャンパスの松が、ずいぶん見事になって……。わたしたちが
入学した頃は、もうこんな小さくて(と、20cmくらいの手幅をつくり)、
飛び越えられるくらいでしたのよ」
そうして、敗戦色の濃い時代に、ここで体験した学生生活は、
形になるものも、ならぬものも、のちに得がたい時間であったと
痛感するようになった──、という話から、ご母堂・幸田文氏へと
つながり、生前の暮らしぶりや、また、亡くなってからの想い、
書くことについて、などが、連綿と語られました。

とちゅう、ご自身で「あら、着物あれこれ、のはずですのに、まあ、
ずいぶんと外れてしまって」とおっしゃって、聴き手も笑いを誘われます。

けれど、書き手としての生の言葉には、気づかされることも多く、
「文章のしっぽ」という表現や、「もうどうにも書けない、と追い詰められた
ときにはじめて、おぼえていたとも、憶えていないともつかないものが
出てくる」といった話に、頷きつつメモをとったことでした。

残り時間が30分、となったあたりで、話は着物に移りました。
「着手(きて)の性格、絹や木綿という布(きれ)の性格、そこに
天気や出かける場所といった状況、さらには多少の約束ごとが
加わって、着物を着るにはかならず、迷う時間が必要になる。
その迷いもふくめたものが、着物を着るということ……」
といった話から、
「そうやって着ていって、“いつもこればかりで面白くないな”という
組み合わせを持つようになって初めて、そこからバリエーションが
広がっていく」といった展開に。
玉氏ご自身は、たとえば、実用着として活躍する一枚に、
色違いの帯を三本ほど合わせたり、の工夫をしておられるとか。

ふだんは洋服で過ごし、講演会や取材など、仕事の折には
できるだけ、母上の遺された着物に袖を通される、とも。
この日着ていらしたのは、青鈍色がかった「お召し」でした。

ときおり、お嬢さんの話も出てきます。
「今日も、“玉ちゃん、ハネがあがってるよ”って娘に注意されました」と、
ほほえましい関係が伺えます。
「“玉ちゃん”って呼ばれるぶん、こちらもお母さんじゃなくって、
好きにさせてもらってるんですよ」と語られる際のお茶目な表情が、
幸せそうに見えました。

満場の拍手を浴びて、講演は終了。本の販売とサイン会があった
ので、読んではいたのですが、もういちど「小石川の家」(講談社文庫)を
手にとり、列に並びました。
書いてくださった言葉は「今夜は十五夜」。

思わず「お月見、なさいますか?」と尋ねると、
「その頃はもう、寝てしまいますねえ。月見より眠気ですね」
とおっしゃいます。
笑って受けましたら、玉さん、ふと真顔になって
「お月見をね、無心に楽しめたのは、母が生きていた頃まででした。
あとはもう、まったく」と、続けられました。
講演の内容もあったので、「やっぱり(存在が)とても大きな
ものですね……」と申しますと
「そうね。亡くしてみて初めて、分かったわね」と。

帰宅後、幸田文著「台所のおと」、「流れる」を再読。この書き手が
母であることの、重圧と幸福……。

この日が3年目/69回目。先日、ひとえ紬に「おつかれさま」と声をかけた
ばかりだというのに、あともう一頑張りしてもらうことに。「LUNCO」さんで
入手したハギレと帯を合わせて秋らしく──。
tamasikouennkai01tamasikouenkai02 
ここまでやわらかな帯は初めてで、けっこう時間がかかりました。
それでもまだ、ズレている。(汗)
(70回目も、おなじ組み合わせで「いつものツアー」参加しました)
copyright (C) 2007-2009, Io Sakano all rights reserved.
無断転載は固くお断りいたします。
designed by polepole...

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。