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ある日とつぜん、着物に目覚めたものの──、さてどうすれば? 迷いながら訊ねながら学びながらの着物日々記録。
*** 着迷いごと ***
さえずりも賑やかに……
2010年 01月 04日 (月) 23:33 | 編集

明けて二日目は、サントリー美術館に向かいました。ふたたび mi さんと
ご一緒です。(笑)

目的は、師走に見逃してしまった「清方ノスタルジア」展。
日本画家、鏑木清方の名品を集めて展示した、見応えたっぷりの展覧会でした。

今回印象的だったのは、音声ガイドに二度、登場した言葉です。
『清方の理想の女性像は「清く、潔く、うるわしい」でありました』。

この言葉を体現した人物こそが、妻の照さんであり、清方の描く女性像には
照さんが反映されることが多かったのだそうです。
照さんは、そうした清方の想いを裏切らないよう、身につけるものから
立ち居振る舞いにまで濃やかに心を配った──。
そう聞いて、彼の清冽な画風の 基盤となった生活の一端を、かいま見る心もちでした。

照さんがモデルだという「秋宵」もまさに、髪の一筋ひとすじにも、初々しさや
清らかさ、誇りたかさが感じられます。

また、画壇の人間関係に疲れはて、自身の絵まで見失いかけた清方が、
次女を描くことで「まったくじぶんをとり戻した」と語った「朝涼」にも、
描き手の心映えが瑞々しく宿っていました。

ほかにも、道成寺の清姫を描いた「春の夜のうらみ」に心奪われたり、
あるいは細かいところで、「娘」に描かれた女性が髪に挿す糸巻のかんざしや、
「洋燈」の女性の着物あわせにアイディアをもらったり、と、まさに
見どころじゅうぶんです。

さらに歩を進めて、「三遊亭圓朝像」に見られる人物観察の鋭さや、
「明治風俗十二ヶ月」にすくいとられた、活き活きとした情景などにも魅せられました。

興味深かったのが、幸田露伴の小説につけられた木版口絵。露伴の小説では
「是真の手による」と描写される〝手あぶり〟があり、それを清方が口絵でも描いています。
はたして、ちょうど三井記念美術館で開催中の是真展で、おなじものを
見つけられるかどうか……?
空想ではなく、これ、と清方が頭の中に思い描いて筆をとったのだとしたら、
あの口絵とおなじ作品が、実際に見られるかも知れません。

などと、あれこれ思いを巡らせるのも、また、なんとも心楽しいひとときでした。

そういえば、以前受けた「柴田是真」についての講義の最中に、鏑木清方著
「こしかたの記」(中公文庫)に是真との交流を示す記述が出てくる、と
お聞きしましたっけ。手に入れなくては。

この日は、不室屋プロデュースのミュージアムカフェが新年特別メニュウ。
ふやき御汁弁当のかわりに、お雑煮をいただきます。……さらに、もう少々、
食べたしたく、不室屋パフェにも食指を伸ばしました。
いずれも「大」のつく満足の一品で、舌の贅沢も味わえました。
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そしてこの日は、めずらしく、やわらかものに袖を通しました。
数えれば百羽はいようという雀たちが、にぎやかに飛び、さえずる
楽しい一枚──。真綿入りの古い博多帯を合わせて、心もちだけでも、
清方の描く世界にすこしでも近づこうというねらい。
(いえ、あくまでも、そういう思いで装いました、ということで)
02011001.jpg02011002.jpg (94回目)
mi さんは、わたしの大好きな一枚、蘇芳色に南天が飛ぶ小紋姿で。半衿の色と
着物の色、さらに帯とがやわらかなコントラストで、印象深い装いでした。
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